内照式看板 水貼りと桜の巻

まだ首筋がすーっとするぐらい

肌寒い帰り道で、まだ青くて甘酸っぱいような

へんてこな香りがどこからともなくふわりと私を包み込んだのですが

川沿いに咲いていたたくさんの桜の木から漂う

「さくらんぼ」の実のにおいのようだと気づいたのは

自転車で坂を登りきった後でした。


花見のシーズンも終わり、次第に訪れる人もまばらになる中

桜の木は花を散らせたあとも

途切れることなく新しい緑の季節を迎えるために

たくましい生命のエネルギーをその中に蓄え始めているのをかんじます。


地下鉄谷町線の太子橋今市駅を下りて15分ぐらい歩いたところに、

Mativeの新工場となるところがあります。


広いスペースがあり、2階は木造の床でとても雰囲気のある場所です。

私はその工場で施工K氏の「内照式看板」の水貼りという作業を手伝いました。


内照式看板とは、どこの建物の中でも良く見かける

内側から緑色に光っている非常口のピクトのサインのようなものです。


作業する台は透明で、コンセントを入れると内側から光るテーブルになっていて

その台の上で、まわりの電気を消したりつけたりしながら

光らせる部分だけ穴の開いたシートを、

すでにその形の穴のあいている黒いシートが貼ってある板とあわせていきます。


外側で合わせるのではなく、内側の穴を見てあわせなければならないので

霧吹きで、よくすべるように洗剤をまぜた水を板に吹きかけて

細かいちりをワイパーですっきりと取り除き、

壁際のスイッチまで走っていって、工場の電気を消します。

再びシートと板の張り合わせる面に両方たっぷりと霧吹きをしてから

慎重かつスピーディーにお互いの上下左右と中の穴を同時にあわせて

すべらせながら合わせます。


水の上で泳ぐたよりないシートを、板にくっつかないように気をつけながら

合った!と思った瞬間、すかさずスキージーという押さえの道具を使って

シートを板にぐいぐい押し付けて空気を外に逃がし、

しっかりと密着させていきます。

最後に板のはしからはみだしたシートをカッターで

きれいにカットしてこそげおとしたら、

取り付け前の内照式看板の完成です。


工場で外で買ってきたお昼ご飯を食べたあと

ひとりで、少しあたりをふらりと歩いてみました。

ぽかぽかとしてとても天気のいい日でした。

近くにあった公園の桜の木から、

バレリーナのように優雅にそっと地面に着地する桜の花の妖精たちは、

枝がついて花が完全な形で残っているものもあり

このはかなくも一生懸命に咲いた美しい花を

持って帰って誰かに見せれたら、と思うくらいでした。


工場で作業をしていると、この会社に入社する前には

全く知らなかったことや経験したことのないことが

今目の前にあるということが、とても不思議で

嬉しいような、誇らしいような、ありがたいような

そんな気持ちがあふれてくるのです。

さくら

 






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